子どもを性犯罪から守ることは、社会全体で取り組むべき喫緊の課題です。
この課題に対応するため、子どもと接する職業に就く人の性犯罪歴を確認する
「日本版DBS」制度の導入が進められています。しかし、この制度の議論の
中で、なぜ「防犯カメラ」という物理的な対策が、重要な「安全確保措置」
として推奨されているのでしょうか。
本ブログでは、その理由を4つの重要なポイントから解き明かします。
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1. 「密室」をなくし、未然に犯罪を防ぐ抑止力として
被害者支援団体からは、子どもの被害を「何とかしないといけない」という
切実な声が上がっています。この声に応える上で最も重要なのは、犯罪が
起こりうる状況を未然に防ぐことです。特に危険性が高まるのは、指導員と
子どもが1対1になる「密室」状態であり、防犯カメラの設置はこの物理的な
密室環境そのものをなくすための極めて有効な手段となります。カメラが
そこにあるという事実だけで、不適切な行動をためらわせる強い心理的な
「抑止力」として機能します。これは、問題が発生した後の対処ではなく、
そもそも被害を未然に防ぐための、最も直接的で効果的な仕組みの一つと
言えるでしょう。
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2. 保護者の「安心」を可視化し、信頼を得るための基準として
保護者が安心して子どもを預けられるかどうかは、事業者の安全対策への
取り組みが客観的に見えるかどうかにかかっています。「日本版DBS」制度
では、学習塾などの民間事業者が国の認定を受ける上で、防犯カメラの
設置を含む安全確保措置が「認定制度の鍵」となります。カメラの設置は、
事業者が子どもの安全確保に真摯に取り組んでいる姿勢を「可視化」する
ものであり、保護者が教育機関を選ぶ際の明確な判断材料となるのです。
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3. 教育現場が認める「実効性」とプライバシーの天秤
防犯カメラの有効性は、単なる机上の空論ではありません。実際に、監視の
目が届くことで「安全確保策として防犯カメラ設置は有効」であると判断
されており、現場レベルでもその実効性が認められています。防犯カメラの
設置は、犯罪の抑止効果を高め、万が一の際には証拠映像として活用できる
ほか、利用者に安心感を提供するなど、多岐にわたる効果が期待されています。
もちろん、職員のプライバシーへの懸念という課題は存在します。しかし、
それ以上に「子どもの安全を守る」という目的が最優先されるべきであり、
そのための最適な手段としてカメラが選択されているのです。
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4. これからの組織に求められる「責任のセット」
これからの教育・保育関連組織には、新たな責任の形が求められます。現場からは
「国は設置の判断も費用も現場任せだ」という現実的な懸念の声も聞かれます。
しかし、そうした課題を乗り越えてでも、単に職員の性犯罪歴を確認する(DBS)
だけでなく、現場での物理的な防犯体制(カメラ等)を整備することが「セットで」
重要視されるという流れは変わりません。これは、万が一の問題を個々の職員の
資質だけに帰するのではなく、組織全体として子どもの安全を確保する体制を
構築するという、明確な責任の表れに他ならないのです。
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まとめ:防犯カメラは「透明な壁」
ここまで見てきたように、防犯カメラは「抑止力」「信頼の可視化」「現場での実効性」
「組織としての責任」という4つの側面から、子どもの安全を守る上で不可欠なツール
となっています。
その役割を例えるなら、防犯カメラは子どもと大人の間に置かれた「透明な壁」です。
お互いの姿は見えながらも、不適切な境界線を越えることを防ぎ、健全な教育環境という
「安全な部屋」を維持するための不可欠なツールと言えるでしょう。
この「透明な壁」が、子どもたちを守るだけでなく、教育者と子どもの間の健全な信頼
関係をも育むために、私たちはどう活用していくべきでしょうか?制度の導入を機に、
社会全体で考えていく必要があります。